ベンゼンの有毒性と発見のおはなし


こんにちは。

豊洲市場の土壌汚染問題が騒がれて久しいですね。

今も石原慎太郎元知事と小池百合子知事がメディアを通して論争しています。

特に土壌汚染、地下水汚染問題は、もともとの土地の売り主である東京ガスまで出てきて、大変なことになっています。

土壌汚染物質の中でも特に基準値を大きく超えた量が検出されたのがベンゼン

今回は、このベンゼンを取り上げたいと思います。
 
 

1.ベンゼンの発見

1825年、電磁気学の分野で有名なファラデーが、鯨油を熱分解したときの生成物の中から発見しました。

その後、ベンゼンは炭素原子(C)が6個と水素原子(H)が6個からできているのはわかったのですが、どのように炭素と水素がつながっているか明らかになったのは誤解を恐れず言うと1865年です。
 
 
一般に炭素原子は手を4つ、水素原子は手を一つ持っていると例えられます。
 
これはもう少し厳密に言うと、手を持っているだけじゃなく、握手している必要があります。

 
 
ベンゼンの分子式はC6H6
 
この構造を決めるということは、要するに 4本の手を持つ6人のC君と1本の手を持つ6人のH君が全員すべての手を握手している状態なのはどんな時? という問題を解くのとほぼ同じなのです。

1865年、ケクレが「炭素原子からなる六員環構造をもち、各炭素原子に一つずつ水素原子が結合し、さらに、炭素原子間には単結合と二重結合が交互に配列した構造式」を提案しました(ケクレ構造式)。
 
ケクレ構造式を化学の記号で書くと下の図になります。
正しくケクレ構造式を書くと左図ですが、通常は右図のように省略して書きます。
 
 

benzene

 
見覚えありますよね、この形!
もしくは、この形の上下左右にさらにいろいろ書いてあるヤツとかも見たことありますよね!
 
 
一説によるとケクレは1匹のヘビが自身の尻尾に噛み付きながら回っている夢を見て思いついたといわれていますが、本当かどうかは怪しいようです。だいたい他人がどんな夢を見ていたかなんて確認しようもありませんしね。

なお、ケクレ構造式は実際には少し間違っていますが、大まかに正しいので、まあケクレが構造決定者と言っていいでしょう。
 
 

2.ベンゼンの性質

最も単純な芳香族炭化水素であるベンゼン
 
化学っぽい感じを映像効果で使いたい場合、何となくベンゼンをはじめとする芳香族炭化水素が描かれる印象があるのは私だけではないと思います。

そう、ベンゼンは化学っぽい印象を人々に想起させる性質があります

あと、水に溶けにくい無色、常温で液体、などなどの性質もあります。

今回の豊洲市場のように、都市ガス製造時に副産物として生成され、土壌汚染や地下水汚染につながることが多いですね。
 
 

3.ベンゼンの有毒性

豊洲市場の地下水モニタリング調査では9回の調査中、最後の2回で環境基準値を上回るベンゼンが検出されました。
基準値の79倍です。
 
ただ、基準値を上回ったのが、最後の2回だけ。
 
どうやら最後の2回は調査会社も変わっているらしい。
 
しかも、基準値を大きく超えた最後の一回に至っては前回までの調査時とは調査のやり方を変えているらしい!
 
 
というのが気になるところですが、これについては今後の追加調査結果を待ちたいと思います。
 
なお、環境基準値は土壌汚染対策法で0.01mg/L、79倍だと0.79mg/L。
 
(水道水水質基準も0.01mg/L、私の大学ノート【衛生工学】の”05 水質基準”を見てください)
 
それに対して、ヒト経口最小致死量は体重1kgあたり50mg(0.057mL/kg)というのが、公益財団法人 日本中毒情報センターの資料にありました。

豊洲のベンゼンの量、法的にどうなのかは置いておいたら、医学・生物学的には問題になるような量じゃないと思います。
 
 

4.発がん性物質としてのベンゼン

ベンゼンの毒性はかなり知られており、衛生管理者の試験などでも出るそうです。
また、ニュースでも取り上げられているのでご存知かもしれませんが、ベンゼンの毒性とは、

長期間曝露すると造血機能の障害が現れる→再生不良貧血や白血病を起こすおそれがある

というものです。

また、世界保健機関(WHO)の一機関である国際がん研究機関(IARC)による人に対する発癌性の「根拠の強さ」評価で”グループ1:ヒトに対する発癌性について十分な証拠がある”とされています。

ちなみに、IARCの評価は5段階でそれぞれ下表のような物質が示されています。

IARCの発癌性根拠の評価
グループ 具体例
グループ1 ベンゼン、アルコール飲料、六価クロムなど
グループ2A アクリルアミド、ジクロロメタンなど
グループ2B 漬け物、鉛、ナフタレンなど
グループ3 ビスフェノールA、コレステロール、水銀など
グループ4 カプロラクタム

 
 

5.ベンゼンと豊洲移転

話題の物質、ベンゼン

有機化学の最も基本的な構造の一つなのに、その毒性から高校の化学で直接目にしたことはないと思います。

発癌性は確実にありますが、それを言ったらお酒も同じ。むしろ怖いのは造血機能障害のほうかな。

ただ、私の意見としては豊洲市場に早く移転してほしいです。

移転を先延ばしにするとコストもかかるし、汚染された地下水が食品に直接かかる可能性はそんなに高くないでしょう。
何より、現在使われている築地市場の老朽化によるチリ、ホコリ、有害物質等の混入などの影響のほうが心配。

調査するときはそんなものは入らない環境でされるのだろうけど、実際運営している最中はどうなんだろうかと思っています。
 
 
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