定義の変更は【質量】だけではない


1.質量の単位の定義が変更される

2019年に 質量 キログラム(kg)の定義が変わるのをご存じだろうか。
正式には現在開催中の国際度量衡委員会で決議される予定だ。
ここで、質量という単位の定義が変わるのだ。
 
そもそも、今までの質量は1989年に定義された
「単位の大きさは国際キログラム原器の質量に等しい」
というものに基づいている。
 
いくつか副原器が作られており、日本にも一つある。先日、質量の定義が変更されるということで、産業技術総合研究所が国際キログラム原器の副原器を公開した。
 

kg
(出典:共同通信)

 
ここでわかることは質量というものの定義は、特定の人工物の質量を基準にしていたにすぎないということだ。実に前時代的な定義である。
 
国際キログラム原器は白金にイリジウムを10%混ぜて作られている。もちろん化学的には安定しているのであるが、モノであることに変わりはないので、いかに厳重に保管していても僅かながら質量が変化していくことは避けようがない。100年余りで約0.05gほど変動したのではないかとも言われているようだ。
 
そこで、今回は人工物ではない定義が提案されている。新しい質量の定義は、
 

キログラム(kg)は質量の単位である。その大きさは、単位 s-1 m2・kg(J・sに等しい)による表現で、プランク定数hの数値を6.62607015×10(-34乗)と定めることによって設定される

 
というものだ。これにより質量の定義は時間(s)と長さ(m)の定義に依存した定義となる。

2.他の単位の定義も変更される

実は今回、質量の定義のみが変更されるのではなく、多くの単位の定義が変更される。
 
特に質量がなじみ深く、かつ今まで原始的な定義だったこともあり注目されているが、温度のケルビン、電流のアンペア、物質量のモルなどSI基本単位の7個すべての定義が変わる。
 
特に質量と関連深いのが物質量モル(mol)だ。
 
現在の定義は略して書くと「12gの炭素12に含まれる原子の数」だ。
質量の定義と深く結びついている。厳密に物質量を考えると、国際キログラム原器との較正により1gの量が変わると1molに含まれる個数も変わるのだ。
 
さらに言うと、12gを正確に測ることはできない。
「測る」という行為には常に「精度」の問題がつきまとうから、正確に12gの炭素12を用意し、その個数を調べるのは不可能である。
 
ちなみに 1 mol = 約 6.02 × 1023 個 である。
逆に現在の定義では、12gの炭素12のモル質量は 正確に12g/mol と決まるのだ。
 
しかし、今回の定義変更でモルは
 

モル(mol)は物質量の単位である。1モルは正確に6.02214076 × 1023の要素粒子を含む。この数値は、単位mol-1による表現でアボガドロ定数NAの固定された数値であり、アボガドロ数と呼ばれる。

 
と再定義された。1モルに含まれる個数が正確に決まったのだ。
逆に言うと、1モルの炭素12を用意した場合、その質量は12gからわずかにズレることになる。

3.何を定義し何を計測するか

この単位の定義というのは、なかなか頭の痛い問題だ。
 
ただ、単位というのは数学ほど数値として厳密なものではないことは自明だ。
 
単位は、その時代の人間どうしの単なる取り決めだ。
 
そして、単位は計測によってお互いが関連付けられており、計測する以上、そこは限りなく正確な数値などありえない。
 
限界となる測定精度が存在する。
 
科学技術の進歩によって精度は向上するかもしれない。ただし、無限に正確な精度はありえない。
 
要は何を「決め」の値にし、何を「計測」の値にするかということだと思う。
 
そして、単位の定義は、その時代毎にもっとも効果的な定義を選択していけば良いのではないだろうか。
 
 
 
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